スポンサーリンク

飛行距離を“マイル”で表示する理由

グラウンドスクール

距離の表し方は、時代や国によって違いがありますが、現代の日本では計量法という法律で“キロメートル”を使用するように定められ、原則的にこれ以外の単位を使用してはならないことになっています。

ところが、飛行機の場合は距離を表す単位として国際的に“ノーティカル・マイル(NM)”という単位を使用するのが一般的で、日本でも航空業界に関してはキロメートルではなくノーティカル・マイルを使用しています。

複数の単位が混在すると、換算のミスでトラブルが起きやすくなるため、世界的にSI単位系への移行が進んでいるのですが、なぜ航空業界ではSI単位系のキロメートルではなく、ノーティカル・マイルを使用しているのでしょうか?

Table of Contents

航空業界が“ノーティカル・マイル”を使う理由

航空機の飛行距離に“ノーティカル・マイル”を使用するのは『航法上の利便性がある』から。

飛行距離の計算でキロメートルを使用しても問題はなさそうな気がしますが、ノーティカル・マイルという単位の定義を調べていくと、航空業界でキロメートルを使用しない理由が見えてきます。

ノーティカル・マイルの定義

ノーティカル・マイルは日本語では“海里”といい、名前の通り『海の上での距離を表す単位』として古くから船舶で使用されてきたもの。

元々は「地球上における緯度の1分角の弧長」として定義されてきました。

Wikipediaより引用

厳密にいえば地球は赤道半径が極半径よりも大きい(GRS80地球楕円体の定義からすると、赤道半径のほうが極半径よりも約 21384.686m大きい)ので↓

Wikipediaより引用

完全な球体ではなく、縦方向につぶされた楕円形ということになるので、正確には1NM=緯度1分ではありません。

このため、現在はキロメートルを基準として

1NM=1.852km

と定義する“国際海里”という単位が使用されています。

それならいつまでもノーティカル・マイルにこだわらず、早々にキロメートルに移行してしまえばよさそうなものですが…。

SI単位系に移行できない理由

SI単位系に移行できない理由は、飛行機や船が参照物の無い洋上を航行することが多いから。

今でこそ地上を車で移動する場合にはGPSを搭載したカーナビを使いますが、カーナビが登場する前は紙の地図を頼りにドライブしていたものです。

クルマなら運転中に見える山や川、建物などのランドマークと地図を比較して、現在地を把握しながら目的地に向かっていけますが、飛行機や船の場合はそういうわけにもいかない。

イメージしやすくするために、道路も標識もない見渡す限りの砂漠を紙の地図一枚でドライブすることを考えてみましょう。

サハラ砂漠(Wikipediaより引用)

目的地の方角と距離は解っていても、そこまでたどり着くための道路は整備されていませんし、標識や看板もありません。

風が吹けば砂が流されて地形が変わるので、ランドマークとして参照できる物も当然ありません。

こんな状態では自分がどこにいるのかを把握することすら難しく、あっという間に遭難してしまいます。

GPSが無い時代にも、飛行機や船はこれと同じような状況で洋上を航行していたわけですが、なぜ遭難せずに飛んでたかというと、地上の景色ではなく、空に浮かぶ太陽や星の位置を参照することで、現在位置を把握していたから。

六分儀と呼ばれる計測機器を使って一定時間ごとに北極星やその他の天体の角度を求め、直前の計測結果を比較すれば現在地を求めることが出来ます。

現在位置さえわかってしまえば、どの方角にどれだけ移動すればいいのか判断することが出来、遭難する心配もなくなるわけです。

ここで把握していた現在位置というのが緯度や経度による地図座標になるわけですが、前述のとおり、緯度1分を基準としてノーティカル・マイルという単位が作られているので、航法計算をする上ではキロメートルを使うよりもノーティカル・マイルを使用した方が便利!

例えば同じ経度にある2つの地点の距離を求める場合

  • A地点:北緯20度10分
  • B地点:北緯20度40分

地図上に2つの点を書き込んで、定規で2点間の地図上の距離を計測して、地図の縮尺から実際の距離を求めるとなるとなかなか面倒ですが、“1NM≒緯度1分”というのが分かっていれば、2点の緯度の差を引き算するだけで『2点間の距離は約30NM』と簡単に求めることが出来ます。

こういった経緯から、今でも船舶と航空業界では距離を表す単位としてノーティカル・マイルを使用しているわけです。

マイレージサービスの“マイル”

マイルといえばエアライン各社が展開している“マイレージサービス”を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、実はこのマイルはノーティカル・マイルではなく、国際マイルという別の単位。

国際マイルとキロメートルの関係は

“1mile = 1609.344m”

ノーティカル・マイルとの関係は

“1mile ≒ 0.869NM”

となるので、国際マイルはノーティカル・マイルよりも若干短い単位になります。

ちなみに、エアライン各社の規定するマイル数は 実際の距離と異なる値となっているようで、例えば羽田-宮崎間の場合

  • 実際の距離:872.3km(≒471NM、≒542mile)
  • マイレージサービス:561

距離数にして19mailの違いがあります。

羽田-宮崎間の場合、実際の距離よりもマイレージの付与数の方が多いので、客にしてみればお得な路線ということになりますが、やはりこういう『実マイルよりマイレージサービスのマイル数の方が多い』路線というのは少ないようです。

まとめ

航空業界で距離を表す際には、キロメートルではなくノーティカル・マイルという単位を使用しています。

この単位は、地球の緯度1分を基準とする単位で、古くから航海で使用されてきました。

飛行機の習慣や風習には、船舶をその起源とするものが数多くありますが、ノーティカル・マイルという単位もその一つです。

SI単位系への移行が進み、いずれノーティカル・マイルという単位はキロメートルに置き換わるのかもしれませんが、参照物の全くない空間を航行するという飛行機の性質上、緯度を基準としたノーティカル・マイルという単位が廃止されることは当面ないんでしょうね。

PVアクセスランキング にほんブログ村

コメント

タイトルとURLをコピーしました